2012年04月01日
四月に入り新しい年度がスタートいたします。今年はいつまでも寒く桜の花がお釈迦様の「お花まつり」の時期と合いそうです。
先日、新聞に、欧米人が季節の盛りを愛でるのに対し、日本人は「さきぶれ」に敏感だとされるという事が書いてありました。特に桜については"桜前線"がニュースになるくらいです。茶道の窯のお湯の沸く音を「松風」と言いますが松林に吹き付ける風をそのように感じるのは日本人だけで、他の人々はただの騒音としか感じないそうです。これは日本人の遺伝子なのだと思います。
生物学者(遺伝学)柳澤嘉一郎氏の「利他的な遺伝子」によると、ヒトと他の動物とのもっとも大きな違いは「利他性にある」と書いてあります。これは社会性や発達した脳の働きによるそうです。この社会性を身につける為には、大人が子供に、社会では先輩が後輩に伝える、特に大人は子供に責任をもって、家庭や学校、地域社会で守るべきルール・道徳等を教えるべきであるという意見でしたがその通りだと思います。たとえば今問題になっている自転車の走行ルール、歩行者の信号無視等大人が子供に手本を示すべきことの一つだと思います。人を教え導くこともまた、大切な利他的な行為だと考えられます。
どこの社会にも共通する道徳的規範の中で、もっとも肝心なものは、「公正さ」と「思いやり(利他性)」であるという事です。「思いやり」は仏教では「慈悲」という言葉のなかに含まれています。仏教学者の中村元先生は慈悲を「温かな心」であると仰っておられます。
利他的な遺伝子を持つ人間、特に日本人の気持ちが、今回の震災で発揮されている事例がたくさん紹介されていますが、復興は遅々として進んでいません。国並びに政治家と呼ばれている人たちは何をやっているのでしょうか、議論・検討は必要ですが何も進まないなら国家や政治家は必要ありません。次の選挙の為にだけ活動している人を"政治屋"と呼ぶそうです。
平成24年4月1日
宝仙寺住職 富田道生
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